2012年1月26日木曜日

電話

M:あなたの電話にはスピーカーがないの?
K:いや、電波が悪いんだ
M:そう、あなたの声は聞こえてるけど
K:僕は大きな声で喋ってるよ
M:あなたの声は聞こえてるよ
K:それでね、僕が言いたいのはね
M:私の話聞こえてる
K:昨日のことなんだけど、僕はとても人生が変わる本に出会ってね
M:私、今おなかが痛くてもう眠たいんだけど
K:いままで僕が思ってた人生ってさ、なんだったんだろうって思うよ
M:もう寝るね
K:それでさ、君と僕のこと考えたんだけど、僕はもう少し落ち着いて喋ったほうが

ガチャ・・・ツーツー・・・

K:それからさ、僕ってさ人の話や気持ちがわかるようになりたいんだ、もしもし?

先物取り引き

お得意様とのお取り引き
好き・嫌い・楽しい・嬉しい・悲しい
願わくば、このお得意様と末永くお取り引きがしたいです
それが我が社のモットーです

お取り引きのあと、我が社の敏腕営業マンは車でスマートフォン片手に
裏の取引を始めます。本日もまことにありがとうございました、またのご来店をこころより
お待ちしております・・・云々

それから、闇の先物取り引きのレートにあたりをつける
疑心暗鬼・破綻・クレーム対応・競合他社
全ての不安要素を先物取り引きで買い占める。これだけ買いそろえておけば、我が社に何が
おきても大丈夫、万全の保険と保障なのです

万が一のときは社員のリストラ・責任者の解雇・社長の自殺で解決をすれば万事よろしい
経営者は不安なのでついつい資本を増やす闇の先物取り引きを指示します
深い深い部分の闇の資本

すべてはお客様のためのはずなのです、すべては・・・
すべては社員のためのはずなのです、すべては・・・

下がる株価・怒号の飛び交う株主総会
それでも
すべてはお客様のためのはずなのです、すべては・・・
すべては社員のためのはずなのです、すべては・・・

ああ、岡本くんもし先方から電話があったら伝えておいてくれないか
社長は今しがた責任をとって死にましたと

不安のための期待

僕は特別だった
他の誰でもない僕はなによりも特別
誰もがどこかで認めてくれるはずだし、僕の悲しみに涙するはずだった
誰かの特別になりたかった
でも、一番特別なのは僕
その僕は千の苦しみを背負っていけば愛されると思った
堪え難い苦悩と苦痛を背負い込めば、誰かの特別になれる
そういうやりかたしか知らなかった

楽しいってなんだろうか
楽しそうに笑ってたら、助けのいらなくなった僕を大事なきみは置いていってしまう
荷物を置いて、ああ今日もいい日だねって笑いかけたら、ずっとそんな日が続くのかな
僕はそんな日を今まで経験したことがないんだ
飲まなければ行きていけない薬にならないと毎日のんでくれないのかと思ってたよ
でも、病気じゃない人に薬はいらない
だから、いつまでも病気でいてほしかったんだ
風邪がなおって捨てられた薬のケースみたいになりたくなかった

きっと、真っ暗な井戸のそこで二人いつまでもささやかに必要とし合っていれば、
僕のことふんずけてあがって行ったりしないだろ
外ではみんなの楽しそうな声が聞こえてる
そっちに行ってほしくなかった
僕は楽しさを知らないから、楽しいことを知ってるひとに
きみのこと、とられちゃうって思ってたんだよ
きみがどうやら楽しい世界からやってきたらしい話をきくと、こわくなっちゃうんだ

水がだんだん増してきた、きみはもういない
もうすぐ足がつかなくなって溺れてしまいそう
必死に叫んでも、もう届かないくらいきみは昇っていってしまったのかな
世界の広さは知ってるよ、むかし勉強していろいろ聞いた

溺れ死ぬことも怖ければ、外の世界できみのいない毎日を暮らすことも怖い
僕が背中に背負ってるたくさんの重たい荷物を捨てて、君が垂らしてくれたロープに
しっかりつかまって一歩一歩昇っていけば、出口でしっかり抱きしめてくれる?
いっしょに僕が昔習って知った広いきれいな世界を歩いてくれる?

僕は危うく溺れるところでぎりぎり立ち泳ぎしてる
もう出たいよ
もう一度、ここから出て、明るい太陽の下で見るきみの顔はどんなだろ
怒鳴り声や鳴き声がこだまする狭い穴の中でしか君の声も僕の声も聞こえなかった
どんな声で笑うんだろ
もう出たいよ