僕は特別だった
他の誰でもない僕はなによりも特別
誰もがどこかで認めてくれるはずだし、僕の悲しみに涙するはずだった
誰かの特別になりたかった
でも、一番特別なのは僕
その僕は千の苦しみを背負っていけば愛されると思った
堪え難い苦悩と苦痛を背負い込めば、誰かの特別になれる
そういうやりかたしか知らなかった
楽しいってなんだろうか
楽しそうに笑ってたら、助けのいらなくなった僕を大事なきみは置いていってしまう
荷物を置いて、ああ今日もいい日だねって笑いかけたら、ずっとそんな日が続くのかな
僕はそんな日を今まで経験したことがないんだ
飲まなければ行きていけない薬にならないと毎日のんでくれないのかと思ってたよ
でも、病気じゃない人に薬はいらない
だから、いつまでも病気でいてほしかったんだ
風邪がなおって捨てられた薬のケースみたいになりたくなかった
きっと、真っ暗な井戸のそこで二人いつまでもささやかに必要とし合っていれば、
僕のことふんずけてあがって行ったりしないだろ
外ではみんなの楽しそうな声が聞こえてる
そっちに行ってほしくなかった
僕は楽しさを知らないから、楽しいことを知ってるひとに
きみのこと、とられちゃうって思ってたんだよ
きみがどうやら楽しい世界からやってきたらしい話をきくと、こわくなっちゃうんだ
水がだんだん増してきた、きみはもういない
もうすぐ足がつかなくなって溺れてしまいそう
必死に叫んでも、もう届かないくらいきみは昇っていってしまったのかな
世界の広さは知ってるよ、むかし勉強していろいろ聞いた
溺れ死ぬことも怖ければ、外の世界できみのいない毎日を暮らすことも怖い
僕が背中に背負ってるたくさんの重たい荷物を捨てて、君が垂らしてくれたロープに
しっかりつかまって一歩一歩昇っていけば、出口でしっかり抱きしめてくれる?
いっしょに僕が昔習って知った広いきれいな世界を歩いてくれる?
僕は危うく溺れるところでぎりぎり立ち泳ぎしてる
もう出たいよ
もう一度、ここから出て、明るい太陽の下で見るきみの顔はどんなだろ
怒鳴り声や鳴き声がこだまする狭い穴の中でしか君の声も僕の声も聞こえなかった
どんな声で笑うんだろ
もう出たいよ